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【気持ちが軽くなる】家族が認知症になった時の介護の心得

リード

「認知症の介護のコツを知りたい」「介護でストレスを溜めないためにはどうしたらいいの?」

認知症の方をサポートする時に、介護が上手くいかなかったり、認知症の方に対してつい腹を立ててしまったりすることがあるのではないでしょうか。この記事では、介護福祉士・小林隆雄さん監修のもと、認知症の介護の心得や認知症の方が安心できる介護をするために 意識すべきことをお伝えします。認知症の症状への対処例も解説しているので、接し方に悩んでいる方もぜひご覧ください。

※この記事では、民間施設は「入居」、公的施設は「入所」、両方をまとめて表現する場合には「入居」と表現しています。

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コラムサマリ

INDEX

■認知症の家族を介護する時の心理状態

・第1ステップ:戸惑い・否定

・第2ステップ:混乱・怒り

・第3ステップ:諦め・適応

・第4ステップ:受容

■認知症の介護「4つの心得」

・1.頑張りすぎない、完璧を目指さない

・2.抱え込まず、周りに頼る

・3.ほかの人と比べない

・4.弱音や愚痴を吐く

■認知症の家族が安心して過ごせる7つの心がけ

・1.ゆったり、ゆっくりを心がける

・2.五感を活かしてコミュニケーションを取る

・3.共感し、感情を合わせる

・4.気持ちや“心の中の世界”の理解を心がける

・5.わかりやすい言葉を使い、慣れた環境を提供する

・6.かけがえのない、必要な存在であることを感じてもらう

・7.外部とのつながりをもつ

■認知症の症状に対する対処例

・「物取られ妄想」への対処例

・「帰宅願望」(徘徊)への対処例

・「暴力・暴言」への対処例

・「介護拒否」への対処例

・介護サービスを上手く利用しながら、認知症の介護をしていこう

・認知症の方が利用できる介護サービス一覧

■自宅介護に限界を感じたら施設への入居を検討しよう

・認知症の方が入居できる施設

■認知症の介護は周囲に頼ることが大切

本文

認知症の家族を介護する時の心理状態

認知症の方を介護する時に、まず知っておきたいことがあります。それは、介護者(自分自身)の心理状態の一般的な変化に関してです。

“認知症介護者”の心理状態の変化を表したものを「4つの心理ステップ」といいます。家族 が認知症と診断されてから現状を受け入れるまでの段階を表しています。すべての方に当てはまるとは限りませんが、自身が置かれている現状を客観的に判断する時の参考にするとよいでしょう。

第1ステップ:戸惑い・否定

家族の今までとは異なるおかしな言動に気づいたり、今までできていたことができなくなったりすることに戸惑う段階です。家族が認知症と診断されても「まさか、そんなはずはないだろう」「もともとこういう性格だったかも」と否定することもあります。

初期の段階では、他人に知られたくない気持ちや周囲への遠慮から、誰にも相談できず悩みを抱え込んでしまう時期でもあります。

第2ステップ:混乱・怒り

家族の認知症の進行に伴い様々な症状に直面するものの、どう対応すればよいのかわからず混乱する段階です。一生懸命介護を続けている中で「頑張っているのに全然よくならない」

「なぜ自分がこんな思いをしなければいけないのか」と次第に怒りを覚えるようになります。

介護者は精神的・身体的に疲労し、やがて介護や認知症の方を拒絶しようとします。そして、そんな自分に嫌悪感を抱くこともあります。

この段階が最もつらい時期であり、つぎの段階へ進むまでに時間がかかる場合があります。

第3ステップ:諦め・適応

やがて認知症の家族と思い描いたようなコミュニケーションを取るのは難しいと割り切れ るようになり、認知症の家族の言動を「病気だから仕方がない」と思えるようになります。 また、介護のコツをつかんでくるため、これまでと同じ症状でも負担が軽くなったように感 じます。

自分自身の頑張りを認めることができるようになり、認知症の家族の現状を受け止め始める時期でもあります。

第4ステップ:受容

「認知症」という病気、認知症の家族、そして介護をしながら共に生きてきた自分自身を受容し、人生経験として認識するようになる段階です。認知症の症状ではなく、本人のよい部分や残された能力に目が向くようになります。認知症への理解も深まり、認知症の家族のありのままの姿を受け入れられるようになります。

認知症の介護「4つの心得」

前述した心理状態は、段階が進むほど現状を受け入れられるようになり、介護者の心の負担が少しずつ軽くなっていきますが、現在も苦しい状態に悩んでいる方もいるでしょう。ここでは、認知症の方を介護する上で知っておきたい4つの心得を紹介します。

1.頑張りすぎない、完璧を目指さない

認知症の介護では、一生懸命に介護をしているにもかかわらず認知症の方の症状が進行してしまったり、介護を拒否されて努力が報われていないように感じてしまったりすることがあります。中には、認知症に関する知識を学んで熱心に介護に取り組む方もいますが、毎日全力で頑張っているといずれ心身ともに疲れてしまいます。

必要以上に頑張りすぎず、完璧を目指しすぎず、自分自身の心と体の健康を第一に考えましょう。

2.抱え込まず、周りに頼る

「本人が介護サービスの利用を嫌がる」「認知症であることを周囲に知られたくない」といった理由から、1人きりもしくは家族だけで介護を抱え込んでしまうケースがあります。 しかし、平均寿命が延び、核家族や共働きの世帯が増えている現代では、介護を家族だけで、ましてや1人で行うのは無理があります。地域包括支援センターや担当のケアマネジャーなどの専門家に相談をして、介護を抱え込まないようにしましょう。

3.ほかの人と比べない

認知症の症状の現れ方や進行度合いは人それぞれです。「〇〇さんよりも介護が大変なのはどうしてだろう」「なぜ〇〇さんのほうが認知症の進行が遅いのだろう」とほかの人と比較しても状況が変わるわけではありません。

自分を責めることで、かえってマイナスの感情が生まれやすくなってしまいます。誰かと比べるのではなく、認知症の方の今のありのままの姿と向き合い、受け入れることが大切です。

4.弱音や愚痴を吐く

最初は「愛する家族のために頑張ろう」と思っていても、介護を続けていく中では、つらい思いや苦しい思いをすることで、認知症の方に対する怒りや不満はどうしても生まれてしまうものです。

精神的な負担を軽くするためにも、親しい友人など、周囲の人に愚痴を聞いてもらえる時間 をつくりましょう。また、認知症の家族会に参加して、同じように苦労をしている方と語り合うのもよいでしょう。

置かれている状況が大きく変わることはないかもしれませんが、誰かに話してみることで気持ちがスッキリするはずです。

認知症の家族が安心して過ごせる7つの心がけ

介護者も認知症の方も安心して気持ちよく過ごすための7つの心がけを紹介します。

1.ゆったり、ゆっくりを心がける

介護する時はゆったり、ゆっくりとした会話や言動を心がけましょう。認知症は脳の情報処理速度が低下していくため、介護者にとっては普通のスピードでも、認知症の方からすると映像を早送りしながら見ているように感じられます。

それでも頑張って介護者の言動を理解しようとし続けた結果、認知症の方が疲れ果ててしまい、余計に状況を把握できなくなり、混乱や怒りの感情に支配されるという負の連鎖に陥ってしまうのです。

介護者が、ゆったり、ゆっくりと余裕のある言動を心がけることで、認知症の方は安心し、落ち着いてきます。

2.五感を活かしてコミュニケーションを取る

認知症の方とコミュニケーションを取る時は、五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)を活かすことも大切です。

情報処理能力が衰えている認知症の方にとって、五感の情報はその能力を補う重要な役割を果たします。五感を使って心のアンテナをできる限り広げているとも考えられます。 そのため「声に抑揚をつけつつ表情豊かに対応する」「身振り・手振りを交えて話す」など、複数の感覚にアプローチすることで意思の疎通が図りやすくなります。

3.共感し、感情を合わせる

人には、相手の感情を読み取って自分の感情を合わせようとする能力が備わっており、これは認知症になっても失われにくいといわれています。「情動調律」とも呼ばれるこの能力は、 認知症の方と円滑なコミュニケーションを取る上でとても重要なものです。

たとえば認知症の方が怒っていたり不安そうにしていたりしても、介護者が共感しつつや さしく接すれば、その感情が伝わり、認知症の方も徐々に穏やかな気持ちになれます。逆に、イライラしている認知症の方に、介護者が不機嫌に対応をしても感情がぶつかることになるだけなので注意しましょう。

4.気持ちや“心の中の世界”の理解を心がける

認知症の方の気持ちや“心の中の世界”を否定せずに理解するよう心がけましょう。

認知症の方は、周囲が驚くような行動や突拍子のない行動を取る場合があります。介護者からすると異常だと思えることもあるかもしれませんが、認知症の方にとっては理由があってしている行動です。それを否定するだけでは何の解決にもならいため、まずは認知症の方の言動を受け止めた上で「そのような行動に至った原因は何なのか」を探ることが大切です。 認知症の方の気持ちや心の中の世界を理解しようとすることは、介護者への信頼感や安心感を生み出します。

5.わかりやすい言葉を使い、慣れた環境を提供する

認知症の方と話す時は、わかりやすい言葉を使いましょう。そうすることで、認知症の方に安心して過ごしてもらえます。

認知症の方は脳の機能低下を起こしており、人によっては聴覚や視覚などの感覚も衰えています。それと同時に、集中力や注意力も低下している状態です。そのため、周囲の状況を正しく把握することが難しく、時には混乱することもあります。

少しでも安心してもらうためにも、わかりやすい言葉で声かけするのが大切です。また、「昔から使っているものは変えない」「慣れ親しんだ環境で生活してもらう」などの工夫もするとよいでしょう。

6.かけがえのない、必要な存在であることを感じてもらう

認知症の方は、思うように行動できず自信を失っていたり、自分が自分ではないような感覚に不安を感じていたりする場合があります。すべてのことを介護者が行ってしまうと、今まで自分でできていたことまでできなくなる可能性もあります。

認知症の方が無理なくできる仕事や役割を任せて、「私は家族(世の中)にとって必要とされる存在で、まだまだ人の役に立っている」と感じてもらいましょう。

お願いしたことが無事にできたら、感謝の言葉を伝えることで認知症の方は「役に立てた」 と実感し、「自分が必要とされる存在である」と自己肯定感を持ってもらうことにつながります。

7.外部とのつながりをもつ

家族以外の方との交流は、認知症の方の社会性を保つための大切な機会になります。症状が進行するにつれて家に引きこもってしまう方もいますが、参加できる場所にはなるべく出かけるようにするのがおすすめです。

1人で行くのが難しい場所や不安な時には、家族や周囲の方が一緒に行って手助けしてあげると、認知症の方も安心できるでしょう。

また、通所介護などの介護サービスを利用するようになれば、介護者のレスパイ(休憩・ 息抜き)の機会にもなります。

認知症の症状に対する対処例

認知症には様々な症状があり、最初は戸惑うかもしれません。ここでは、いくつかの対処例を解説します。

「物取られ妄想」への対処例

認知症の症状のひとつに被害妄想があります。中でも多いのが「物取られ妄想」です。認知症の方が「物取られ妄想」に陥った場合、相手の感情に寄り添って共感してあげるのが大切です。

「財布を盗まれた」といった「物取られ妄想」は、日頃関わる機会の多い家族やヘルパーの方がよく疑われます。盗んでいないことを主張(否定)しても、認知症の方は盗まれたと思い込んでいるため、かえって状況が悪化する場合があります。まずは、相手の主張を受け止めて共感し、盗られたといっているものを一緒に探してあげましょう。

先に見つけたとしても「ここにあったよ」と伝えるのではなく、上手に誘導して認知症の方に見つけてもらうのがポイントです。自分で見つけてもらうことで、盗まれたのではなかったと実感してもらうことができます。

「帰宅願望」(徘徊)への対処例

家や部屋から出て、あてもなく歩き回ることを「徘徊」といいますが、認知症の方の場合、本人の中ではしっかりとした理由や原因があって外に出て歩き回ることがほとんどです。 たとえば、「帰宅願望」がある方の場合、記憶が若い頃に戻っていて「その頃に暮らしていた家に帰ろうとしている」「子どもがまだ小さかった頃の習慣から子どものお迎えに行こうとしている」などが徘徊の理由として考えられます。

「帰宅願望」が症状として現れた場合、「ここがあなたの家ですよ」といった説得ではなく、 「どちらに行かれるのですか?」「何か用事あるんですか?」と質問をし、行動の理由を尋ねてみて、その回答から理由を探ってみましょう。理由がわかれば、「迎えにきてくれるそうなので、お茶でも飲んで待っていてください」や、「今日は遅いので明日にしましょう」 と、気をそらす声かけができます。

それでも認知症の方が外に出たがる場合には、一緒に外に出て、ある程度歩いたところで、「そろそろ帰りましょうか」と声をかけると素直に戻ってくれることもあります。

「暴力・暴言」への対処例

暴力や暴言はすべての認知症の方に起こるわけではありません。暴力や暴言の原因には、「脳の機能低下で感情が抑えられない」「今飲んでいる薬の影響」「プライドを傷つけられたと感じた」「体調不良がうまく伝えられない」など、様々なことが考えられます。

認知症の方に暴力や暴言の症状が現れた時には、まずは物理的かつ感情的に距離を取ります。力ずくで押さえつけたり口論したりすると、かえって状況を悪化させかねません。また、刃物などの危険なものは普段から認知症の方の近くに置かないように注意しておきましょ う。

つぎに、専門職や医師などに相談をしながら、暴力・暴言が現れた原因を探り、対応を一緒に考えます。状況によっては精神科への入院や施設入居を検討する必要があるかもしれません。大事なのは、1人で問題を抱え込んでしまわないこと。必ず周囲に相談しながら対処するようにしましょう。

「介護拒否」への対処例

介護者にとって必要と考えている介護を拒否されることは深刻な問題です。認知症の症状 には、「お風呂に入らない」「食事を摂らない」「薬を飲まない」「介護サービスの利用を嫌がる」など、様々な介護拒否があります。そうした時には、認知症の方が拒否をする理由を考え、これまでと対応方法を変えてみることで解決する場合があります。

たとえば、介護サービスの利用を拒否する場合、人との関わりが得意ではなかったり、そもそも自分に介護が必要と認識していなかったり、介護サービスについて理解ができていないという可能性もあります。

理由が想定できたら、介護サービス事業者と連携して、「これは便利だ」とか「これは楽しい」と気持ちよくサービスを利用してもらえる工夫を考えましょう。最初はサービスの利用を拒否していても、利用するうちにすっかり気に入って楽しみにするようになる方も多くいます。あきらめずに取り組んでいきましょう。

介護サービスを上手く利用しながら、認知症の介護をしていこう

家族が認知症になった時、介護者には、精神的・身体的に大きな負担がかかります。介護は1人で抱え込まず、介護サービスを上手く活用して、できるだけ負担を軽減していきましょう。

認知症の方が利用できる介護サービス一覧

認知症の方が利用可能な介護サービスの種類とその特徴をまとめました。

介護サービスの種類サービス概要・特徴
認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)

• 認知症の方を対象としたデイサービス

• 認知症の症状に適した介護を受けられる

• 一般的なデイサービスよりも数が少ない

デイサービス

• 自宅から通うことで介護サービスを受けられる

• 認知症の方も利用できるが、暴言・暴力がある場合は利用を断られることもある

夜間対応型訪問介護

• 夜間の時間帯にホームヘルパーが定期的に自宅を訪問し、おむつ交換や排せつ介助などをしてくれる

• 夜間対応型訪問介護をお願いできる事業所は少ない

ショートステイ

• 短期間、施設に宿泊して介護サービスを受けられる

• 最短1日から、最長30日まで連続で利用できる

• 冠婚葬祭や出張、介護者自身の休息などを目的に利用するとよい

介護者が感じている困りごとや住んでいる地域にある事業所などを整理して、適したところを探してみるとよいでしょう。

自宅介護に限界を感じたら施設への入居を検討しよう

「認知症が進んで自宅介護の負担が大きくなった」「介護者が年齢を重ねて介護がつらくなってきた」といった場合は、施設への入居を検討しましょう。

施設には入れたくないと考えている方もいるかもしれませんが、2023年時点ではまだ認知 症の根本的な治療方法は見つかっていません。自宅での認知症の介護は、介護をする家族が心身ともに健康であって初めて成り立ちます。限界を超える前に、その先のことも考えておきましょう。

認知症の方が入居できる施設

認知症の方が入居可能な施設とその特徴をまとめました。確認してみてください。

施設施設の概要・特徴
グループホーム(認知症対応型生活介護)

• 65歳以上で要支援2以上の認知症の方が対象

• 5~9人程度で共同生活を送りながら介護サービスを受ける

• 食事の支度や洗濯などは利用者ができる範囲で職員と一緒に行う

有料老人ホーム

• 「介護付き」と「住宅型」の2つに大きく分けられる(認知症の方は前者のほうが適している)

• 「介護付き有料老人ホーム」の場合は、要介護1~5の認定を受けている方が対象

•   施設によって提供されるサービス内容やイベントが異なる

サービス付き高齢者向け住宅

• 「介護型」と「一般型」の2つに分けられる

•   施設によって入居基準は異なる

•   認知症の方は「介護型」のほうが適しているが、施設数は少ない

特別養護老人ホーム

• 要介護3以上の方が対象(要介護1・2でも入所できる場合もある)

• 寝たきりなど、介護度の高い方も受け入れている

• 看取りにも対応していることが多い

施設を選ぶ際は、予算や施設の雰囲気、周辺の環境、居室の広さ、実施しているサービス内容など、入居する認知症の方の好みなども踏まえて優先する項目を決め、施設を絞り込んでいきます。可能であれば、入居する本人も一緒に施設見学ができるとよいでしょう。

認知症の介護は周囲に頼ることが大切

認知症の方を介護する上で覚えておきたいのは、介護者である自分自身の心身の健康を第一に考え、介護サービスや周囲の方を頼ることです。認知症の介護では様々な困難に直面することもありますが、気を張りすぎず穏やかに介護することで乗り越えていきましょう。

この記事の執筆協力

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マネコミ編集部

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